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矢尾定へおこしやす~「冷めても美味しい」~

皆さんこんにちは!

矢尾定の更新担当の中西です。

 

「冷めても美味しい」

 

京都の仕出し料理は、食べた瞬間の派手さよりも、「食べ終わった後に残る満足感」で勝負します。その理由は、仕出しが“移動する料理”だから。店内の最高条件ではなく、届け先の環境、時間差、人数差…あらゆる変数の中で成立させる必要があります。だからこそ、仕出しには料理人の技だけでなく、段取りと設計の力が詰まっています🧠✨

1)温度が変わると味が変わる――仕出しの難しさ 🌡️

料理は温度で印象が変わります。熱いと香りが立ち、冷めると味が濃く感じやすい。仕出しは、その変化を見越して作られるため、味付けが“店の料理”とは別物になることがあります。
例えば、煮物は「煮含め」の時間で味を入れ、角が立たないように整える。焼き物は冷めても硬くなりにくい切り方・焼き方を選ぶ。揚げ物は時間が経ってもべちゃつきにくい衣の工夫をする。
つまり、京都の仕出しは「冷めた状態が完成形」。ここが、一般的な弁当との決定的な違いです🍤

2)一品一品に役割がある:献立は“構造” 🧩

京都の仕出しは、品数が多いことがよくあります。これは単なる豪華さではなく、構造として必要だから。
・酸味(酢の物)→口をリセット
・旨味(煮物)→満足感の核
・香ばしさ(焼き物)→食欲の波を作る
・食感(胡麻豆腐、湯葉、揚げ物)→飽きさせない
・甘味(甘味や玉子)→余韻を整える
この構造があるから、最後まで疲れずに食べられる。京都の料理人は、味の“設計図”を描きながら仕出しを組み立てます📐

3)素材の扱いが京都らしさを決める 🥬🐟

京都の仕出しで嬉しいのは、素材の扱いがとにかく丁寧なこと。京野菜の炊き合わせ、湯葉のあんかけ、鱧の落とし、鯖寿司、白味噌の風味…。
京都は素材を「大きく主張させる」のではなく、「素材の居場所を整える」料理が多いです。出汁で支え、香りで輪郭をつくり、余韻で京都らしさを残す。
そして仕出しでは、食べる人が箸を進めやすいように、骨や筋の処理が丁寧に施されることが多い。こういう“見えない仕事”が、信頼につながります🔍

4)段取りが命:仕出しは料理+物流 🚚

仕出しを支えるのは、厨房だけではありません。時間、温度管理、盛り付けの順番、配達ルート。すべてが一体になって初めて成立します。
例えば、同じ日に法要が重なれば、配達時間が数分単位でズレると会の進行に影響します。だから京都の仕出しは、早めの相談や確認が丁寧。電話でのやり取りも含めて“サービス”として完成されている店が多いです📞

5)器と包みが味を引き上げる 🎁

折箱や重箱、掛け紙、風呂敷包み。京都ではこれらが料理の一部として扱われます。器が整っていると、料理の姿勢が正しく見える。美味しさは味覚だけでなく、視覚と心で感じるもの。
だから京都の仕出しは、箱の中が“美しい間(ま)”で構成されます。ぎゅうぎゅうに詰めるのではなく、余白を残して格を出す。ここに、茶の湯や京文化の影響が見えます🍵

6)「派手じゃないのに満足する」理由 🌙

京都の仕出しは、濃い味や油の多さで満足させるのではありません。出汁の旨味、素材の甘み、香りの余韻、献立の構造で満足させます。
食べ終えた後に「しんどくない」のに「ちゃんと満たされている」。この感覚こそ、京都の仕出しの強み。世代を問わず支持されるのも納得です😊

京都の仕出し料理は、職人技と段取りの結晶。冷めても美味しいように設計された味、構造としての献立、包みまで含めた美学。ふたを開けた瞬間だけでなく、食べ終わるまで“京都”が続く――それが仕出しの奥深い魅力です🍱✨

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